第一回学術集会は成功裏に終了

記念すべき第1回の学術集会が、1月30日、東京かつしかシンフォニーヒルズで開催され、定員68名の会場は満席になりました。今回の集会を成功裏に終えることができたのは、お忙しいところをご参加いただいた皆様、座長の労をおとりいただいた先生方、要員としてお手伝いいただいた方々のおかげです。主催事務局を代表して深く御礼を申し上げます。

午前/基調公演の部

@「換気システムと居住者の健康問題」
国土交通省国土技術政策総合研究所建築研究部建築新技術研究官・澤地孝男氏

座長=美和健一郎氏


澤地孝男氏

 午前中は、まず国土交通省国土技術政策総合研究所建築研究部建築新技術研究官の澤地孝男氏をお招きし「換気システムと居住者の健康問題」と題して記念講演をしていただきました。同氏は冒頭に「今日の講演内容はどんな教科書にも載っていない話であるので一度はレジュメを通読してほしい」と切り出されましたが、本当に他では聞けない、書籍にも書かれていない、しかしシックハウス問題に携わる者・建築実務家には必修の内容であると思われました。そして多くの疑問が氷解した一時間でした。

 いわゆる省エネ住宅の分野では欠かせない技術として関心が高まってきていた「全般換気」は、平成15 年7 月の法改正により全ての住宅において必須となったものの、必要性に関して一般の方から様々な疑問や意見が出されていました。その代表的なものは「漏気(隙間換気)のみで換気は十分ではないのか」、「窓開け換気でいいではないか」などです。これに対して、澤地氏は「省エネルギー基準住宅を除いた在来工法住宅においても、合板等の面材を用いた工法が多用されるにしたがって、知らず知らずのうちに隙間の量も減ってきており、相当隙間面積の平均値は5.4cm2/m2」 と非常に小さくなっているため、高気密を謳っていない一般住宅でも漏気が少ないこと、また「漏気に依存する状態は『無計画自然換気』であり、欧米ではこれをadventitious ventilation(偶発的な換気)と呼び、換気量の目標値すら持たず、また換気量がどのくらいになるかも想定せずに設計を行う状態が長らく続いてきたのである」と明快に説明。更に換気に関する基礎的な事項、設計時の必要な配慮等、データに基づきわかりやすくご講演いただきました。聴衆の一人として、改めてこのテーマを丸一日かけて講義をしていただきたいと強く思いました。

A「住環境と病原性カビ」
住環境医学研究会会長・笹川征雄氏

座長=柘植満氏


笹川征雄氏

 午前中2つ目の会長講演では、皆様ご存知の笹川先生から「住環境と病原性カビ」と題して、身の回りに存在するカビの生物学的特性や各種カビの特徴を鮮明な写真とともに詳細にご説明いただいたので、基礎的なことがらについて大変勉強になりました。実は笹川先生は真菌研究では様々な医学業績を持っておられます。「シックハウス症候群の定義(笹川 2001)」にもシックハウス症候群の原因物質として真菌の関与が規定されていますが、室内空気汚染におけるカビの位置づけは今後ますます高まるものと考えられています。住環境医学研究会が今期より開始する課題の一つとして「住環境と真菌相」についての研究に取り組みます。これはわが国における室内真菌相と健康への影響について建築学的・医学的な調査を実施することにより、日本の住宅室内真菌相の実態とシックハウス症候群への関与を明らかにすることを目的にしています。

午後/一般演題の部

■建材管理とシックハウス予防のセッション
座長=近藤之彦氏

 午後の一般演題では、建材管理とシックハウス予防のセッションで、白瀬哲夫氏が「シックハウス症候群を未然に防ぐ手法の確立に向けた調査研究」として、3つの要素(@MSDSだけでなく使用材の徹底した成分確認をチャンバー法による化学物質放散試験で必要に応じて行う、A@で確認した材料のみを用いた現場施工の実施とその徹底管理、B施工前から竣工後までの気中濃度の把握と結果によって改善策実施)を中心として予防策を講ずればよいことを検証したと発表しました。
 佐倉慎二郎氏は、「建材流通が取り組んだシックハウス対策」として、@空気の管理:引渡し前に家具を置かない状態での空気質測定、A建材の管理:フローリングのカットサンプル材のチャンバー測定、B施工の管理:クリティカルパスメソッド(CPM)工程管理の活用と職人の施工管理について述べ、今までの流通にどんな問題点が潜んでいるのか、また搬送上、保管上、納材時の問題を検証した取り組みを紹介しました。


白瀬哲夫氏

■疾患概念・理念のセッション
座長=土屋清文氏

 疾患概念・理念のセッションでは、「シックハウス対策の家づくり:無農薬住宅のすすめ」と題して影山満氏は、現在の日本の住宅には、シロアリの生息していない国フィンランド産のホワイトウッド集成木材が大量に使用されていることが問題であると指摘しました。同氏は、人とシロアリが上手に共生することを説き、住宅下部にシロアリが嫌いな木材である国産の桧かヒバの心材部分を使用することが重要と述べました。
 笹川征雄氏は「建築士にも必要なシックハウス症候群と化学物質過敏症の鑑別診断」として、両者を混同し同一視した混迷情報によって患者は誤解や心因反応をおこし相談に応じる建築士や医師を困惑させている現状があり、両者の違いを明確にすることは、医学的、社会的な混乱を回避するための最大の課題であるとし、両疾患の鑑別点を@住環境との因果関係、A病態・発症機序、B量-反応関係、C症状の再現性、D症状の特徴について解説しました。(鑑別表を含めて詳細は住環境医学研究会ホームページからご覧いただけます。)


影山満氏

■化学物質の濃度と疾患のセッション
座長=須山祐之氏

 化学物質の濃度と疾患のセッションでは、「住宅密集地および室内における線香の影響」として赤羽根巖氏が、住宅密集地に墓地ができてから幼稚園を含む周囲の施設が煙で汚染されるようになり喘息等の健康被害もみられたことから、線香の燃焼ガスの化学組成の分析、呼吸機能に与える影響を評価して得られた知見を発表しました。住宅内外で使用される様々な商品があり不明の点も多々あるものの、共通して、燃焼すると揮発性物質が発生する、燃焼すると粉塵が発生し肺の奥深くに入り込むことがある1.0μm以下の大きさのものが多い、ダイオキシンやベンゾ(a)ピレンも発生するという事実が明らかになり、人体への影響が懸念されるとしました。
 「室内空気汚染物質により生じる気管支喘息」として蓑島宗夫氏が文献レビューを試み、ホルムアルデヒドは指針値の半分以下にする必要があること、TVOCは低ければ低いほど喘息には好ましいであろうことを述べました。「微生物が生産する揮発性有機化合物(MVOC)」として河野政由氏が次のようなトピックスについて紹介しました。細菌やカビなどの微生物が有機物を分解するときに揮発性有機化合物(MVOC)が放出されることが報告されていること、室内空気中のMVOCを測定・分析する事で見えない所のカビ汚染が検出可能であり、シックビルディング症候群が発生している建物においてMVOC濃度がかなり高くなっている事例が外国で報告されているとのことです。

赤羽根巌氏 河野政由氏

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 日本住環境医学研究会  
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