1.背 景
シックハウス対策で建築基準法が改正されてから3年が経過したが、対策の啓蒙・普及はまだまだ十分とは言えない。逆にF☆☆☆☆の建材を使用し、どこかに換気扇が付いていればシックハウス対策は万全という風潮が蔓延してきており、「清浄な室内空気質を確保する」という根本的な意識は薄れ始めているのが実際のようだ。
日本住環境医学研究会とシックハウスを考える会首都圏支部ではシックハウス相談に対応すべく、賃貸住宅リフォームなどシックハウス対策が希薄になりがちな工事に着目して課題の提議・研究・啓蒙を行ってきているが、今回の2005年末から2006年はじめにかけて、学習塾についての相談が重なった。ひとつは学習塾の勤務者がシックハウスになりその対応についての塾経営者からの相談、もうひとつは当報告となる塾の教室移設工事におけるシックハウス対策についての生徒保護者からの相談である。
進学塾や学習塾は送迎の利便性や安全性の点から、駅近くのテナントビルに教室を構える事が多い。立地が生徒を集める大きなファクターとなる以上、テナント賃貸料が経営コストにしめる割合も大きいものと想像される。すなわち店舗の改装工事と同様に、低コストの材料で短期間のうちに工事を完成し、賃貸契約後出来るだけ早くオープンすることにより、初期投資の回収を素早く行うことが重要になってくる。
当然の事ながらシックハウス対策の面から見ればリスクが大きくなる内容である。そして文部科学省の学校衛生基準が適用されることはなく、小規模の教室では空気質の測定が行われる事はまずコスト的に不可能である。
よって空気質を担保するには、使用する材料の仕様を検討していく事が有効な手段となる案件である。
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