シックハウス対策建材・資材データベース登録製品を使用した実証実験

日本住環境医学研究会/「シックハウスを考える会」首都圏支部
 

安全な学習塾を目指しての取り組み
〜教室の移設工事における、シックハウス対策実証実験〜

要 求

 生徒はシックスクールでトルエンおよびホルム
 アルデヒドの被害をうけた経験がある。

  新設する教室の内装工事において、当該
  生徒が授業を受けられる環境を、工事開
  始からオープンまで2週間で確保する。

 

空気質の目標

VOC 空気質目標

ホルムアルデヒド及びトルエン

指針値の1/10以下

指針値設定VOC6物質

指針値の1/10以下

TVOC

暫定目標値 400μg/㎥

臭 気 生徒が気にならないレベル
1.背 景

 シックハウス対策で建築基準法が改正されてから3年が経過したが、対策の啓蒙・普及はまだまだ十分とは言えない。逆にF☆☆☆☆の建材を使用し、どこかに換気扇が付いていればシックハウス対策は万全という風潮が蔓延してきており、「清浄な室内空気質を確保する」という根本的な意識は薄れ始めているのが実際のようだ。
 日本住環境医学研究会とシックハウスを考える会首都圏支部ではシックハウス相談に対応すべく、賃貸住宅リフォームなどシックハウス対策が希薄になりがちな工事に着目して課題の提議・研究・啓蒙を行ってきているが、今回の2005年末から2006年はじめにかけて、学習塾についての相談が重なった。ひとつは学習塾の勤務者がシックハウスになりその対応についての塾経営者からの相談、もうひとつは当報告となる塾の教室移設工事におけるシックハウス対策についての生徒保護者からの相談である。

 進学塾や学習塾は送迎の利便性や安全性の点から、駅近くのテナントビルに教室を構える事が多い。立地が生徒を集める大きなファクターとなる以上、テナント賃貸料が経営コストにしめる割合も大きいものと想像される。すなわち店舗の改装工事と同様に、低コストの材料で短期間のうちに工事を完成し、賃貸契約後出来るだけ早くオープンすることにより、初期投資の回収を素早く行うことが重要になってくる。
当然の事ながらシックハウス対策の面から見ればリスクが大きくなる内容である。そして文部科学省の学校衛生基準が適用されることはなく、小規模の教室では空気質の測定が行われる事はまずコスト的に不可能である。

よって空気質を担保するには、使用する材料の仕様を検討していく事が有効な手段となる案件である。
 

2.相談経緯および実証実験のスキーム


2003年に小学校の新築校舎でシックスクール被害にあった生徒の保護者である会員から、学習塾のリフォーム(教室の移設)における建材の選定について相談をうけた。現在通う教室の移設計画があり通常の工事では通えなくなる可能性があることから学習塾の地区統括責任者に相談したところ、建材の指定があればそれを使用するとのことで、相談の内容はその建材選びについての依頼であった。材料について1割程度まではコストアップを許容するとの塾サイドの了解がえられていた。
 ただし空気質の精密測定費用の捻出までは塾サイドも難しく、シックハウス調査士取得の会員企業に空気捕集の協力をお願いし、また会員企業の材料メーカーに空気分析の協力をお願いすることによって、日本住環境医学研究会、シックハウスを考える会首都圏支部の研究課題とするスキームを整え(表
-1)、実証実験に望んだ。

 建物は京王線沿線の駅前にある1階、2階店舗、上階マンションとなる鉄筋コンクリート造りの住宅・店舗複合ビルである。この2階にあるテナントのひとつが教室となる。

工事は基本的にスケルトン渡しであるが、教室内のトイレ・給湯室の設置工事を建物のオーナーサイドで、その他の内装工事は学習塾サイドで行うことに成っている。テナント契約は5月からで6月からオープンまで一ヶ月、ゴールデンウィークまた建物のオーナーサイドの工事を含むため、実質的な内装工事開始から教室がオープンするまで3週間となる。(ビルオーナーサイドの工事の遅れもあり実際には19日)
  備品類は、出来るだけ新たなVOC発生源を減らすため、これまで使用していたものをそのまま移設して使用することとなった。

-1 実証実験のスキーム

項 目

分 担

施 主 明光義塾ブロック統括部
実証実験の企画立案 日本住環境医学研究会、「シックハウスを考える会」首都圏支部
空気質目標設定 相談者、日本住環境医学研究会、「シックハウスを考える会」首都圏支部
材料選定 日本住環境医学研究会、「シックハウスを考える会」首都圏支部
工事管理 フリーAXEZ株式会社
空気捕集 泣Aコモテック(会員/シックハウス調査士)
空気質分析 ロンシール工業 研究開発部 (会員)
最終評価・開校時の指導 日本住環境医学研究会、「シックハウスを考える会」首都圏支部


Point1
コスト的に従来の学習塾の仕様から大きく外れることは出来ない。
Point2
工事開始から開校までの3週間で使用上問題ない空気質を確保する。
Point3
工事の主体がビルオーナーサイドと学習塾サイドにまたがる為、工事管理に注意する。

3.空気質の目標


シックスクールでトルエンおよびホルムアルデヒドの被害を受けた生徒が使用する教室である。よってホルムアルデヒドとトルエンを含む厚生労働省指針値設定6物質は、出来るだけ小さいほうが望ましい事から指針値の1/10以下を目標とし、TVOCは暫定目標値の400μg/㎥以下を目指すことにした。また臭気も大きく影響することが考えられ、主要材料については事前の官能評価を行うこととした。

換気は既存の設備をそそまま利用することになったが、その能力の把握が出来なかった為、最終の空気質測定結果・状況を見て、窓換気等による対応を申し入れることにした。


個別指導の教室の見取り図
 

Point: VOCの室内濃度が設計の基本となるが、臭気についても考慮する必要がある。
 

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